はじめに
はじめまして! 私の名前はダンテ・メディナです。メキシコ人の学生で、現在はフランスのシュパンフォゲーム大学で、プロジェクト管理とゲームデザインの分野で修士課程に進んでいます。2014年の東京ゲームショウのスカラーとして、このエッセイの機会を活かして、このユニークな経験を自分に授けてくれただけでなく、西洋と日本のゲーム開発者をつなげるすべての仕事に対して、IGDA日本にたいへん御礼を申しあげます。今後のさらなる成功をお祈りしております。
プロデューサー志望の学生にとって、このスカラーシップでは多くの発見がありました。というのも私が学んできたものとはゲームの開発メソッドの点で大きな違いがあったからです。日本のゲーム開発のユニークさには目から鱗が落ちる思いでした。中でもユビキタスエンターテインメントにはそれが顕著でした。
私は会社の履歴にたいへん刺激を受けました。2003年8月8日に設立された同社では、創業者グループがすでにイノベーションと技術を限界まで追求する姿勢を見せていました。1999年にはメールベースの(釣り)ゲームを携帯電話でローンチしていました。2000年には最初の携帯電話向けMMOゲームをリリースしていました。もちろん、これは日本国内のみのサービスでした。というのも当時、西洋とは比べものにならないほど、日本の携帯電話は非常に洗練されていたからです。UEIでは現在、トヨタ向けの広告ゲームともいうべきタイトルを開発していました。同社では紙のカードを読み込ませてゲーム内で使用するトレーディングカードゲームをリリースしていたのです。
UEIで作られたゲームとして、彼らは最初の携帯電話向けARPGである『メルルーの秘宝』を配信できていました。彼らはこのマイルストーンをARアプリケーションと『クリムゾンフォックス 渋谷の街に隠された暗号を探せ!』というARを用いた宝探しゲームと、ARナビアプリの『ARider』に焦点を当てて追求しました。最終的に同社は『天空のエリュシオン』という、骨太のモバイル向けMMORPGをリリースしました。
コンシューマ向けのソフトウェア以外にも、とても興味深いプロジェクトを推進していました。同社では継続的にHTML5とJavaScriptによる「enchant.js」と呼ばれるゲームエンジンを研究開発しており、すでに様々な国産ゲームで採用されていました。とても簡単に使用でき、開発したゲームは9leapというウェブサイトにアップロードして、そこでプレイしたり、互いに順位付けがなされていました。最後になりましたが、同社のenchantMOONというタブレットでは、enchant.jsベースのゲームエンジン、MOONblockをもちいて、すべての年齢層の人々に対してコードを一行も書くことなくゲームを短時間で造り始めることを可能にしていました。MOONblockのユーザーフレンドリーさは本当にすばらしく、まったくプログラム経験がない人々によって、どれだけ多くのゲームが開発されてきたかを知り、目の覚める思いでした。
プレゼンテーションの終了後、私たちは開発室の見学を許され、アーティストの方と開発パイプラインやアーティストとエンジニアの割合などについて伺いました。最後にプログラムのインターン生から、enchant.jsにおけるモバイル向けの最適化処理についてプレゼンテーションがありました。そこではレンダリング技術やシェーダーのタイプ、そしてどのように応答速度を上げ、モバイル上でレンダリングスピードやフレームレートを向上させるように努めたか、エンジンに関する技術的な話がありました。
まとめると、UEIのプロダクトは一般的なゲームベースのソフトウェアやハードウェアのレベルをはるかに凌駕していました。同社では常に新しい技術を追求し、新しい製品やサービスを開発していました。誰もがゲームを簡単に作れる環境を実現するために企業が進んでいる様を見れたのは本当に素晴らしいことでした。なぜなら私は今後、おもしろくてユニークなゲームがこうした取り組みの中から生まれてくると信じているからです。
ランド・ホーは80名程度のゲームソフトウェア企業で、1999年にセガの開発者が独立して起業しました。私たちはビジネスデベロップメントのゼネラルマネージャーと会議室に座り、スタジオに関する個人的な見解について伺いました。同社では数多くのゲームが開発されていて、その多くは有名なパブリッシャーから販売されていました。ヒットタイトルの中には競馬シミュレーションや、カジュアルなダンスゲームがあり、すばらしいものでした。一番有名なタイトルはXbox One専用ゲームの『クリムゾンドラゴン』で、2013年のE3でマイクロソフトから独占で発表されました。
同社では非常に多くの種類のコンソールゲームを開発しており、常に新しいプラットフォームに挑戦し、新しい技術が取り入れられていました。興味深いことに、同社は中堅規模のディベロッパーで、自社IPだけでなく、他社からパブリッシングしてもらう戦略も採用していました。同社のチームの適合力は大変素晴らしいものでした。というのも、同社では一つのプラットフォームに固執することなく、さまざまなサイズのゲームを開発していたからです。とても魅惑的な訪問で、同社のビジネス事例について知ることができました。
モバイルオンラインゲームの専業メーカーとして、Aimingは非常にすばらしい成功を収めていました。2011年に創業され、今や3カ国で4つのスタジオを経営しています。MMOの一つは日本で4番目のアクティブユーザーを誇っています。同社ではモバイルオンラインゲームだけに集中しており、タイトルは大きな成功を収め、日本のモバイル市場でたくさんのゲームを運営しています。同社のタイトルには『ロードオブナイツ』、ハックアンドスラッシュスタイルの『ヴァリアントレギオン』、そして成功したゴルフゲームの『スマホでゴルフ!ぐるぐるイーグル』があります。
Aimingで一番良いと感じたのは同社の就労哲学でした。管理職の人間が社員がどんなゲームを遊んでいるかについて非常に感心を持っており、ゲームを一緒に遊んで分析さえするのです。月曜日には社内MTGが開催されています。リリースされたゲームの運営のため、同社では開発チームをクライアントとバックエンドに分割し、全員でゲームを遊んで分析しながら、追加コンテンツやイベントのアップデートが行われているのです。就業後の社員サークル活動なども盛んでした。このようにAimingでは働く人のための環境作りと改善に力が入れられていました。同社の就労哲学から多くを学ぶことが出来ました。
スタジオツアーと会社案内の終了後、同社のクリエイティブ職のキーメンバーがスカラーのポートフォリオや作品チェックに時間を割いてくれました。私はリードゲームデザイナーの方と話をすることができ、自分の作品を見て有益なアドバイスをいただいたり、同社のプロダクトパイプラインの強みについて説明してくれました。このように身近な感じで話ができ、私がそれまで慣れ親しんできたものと、同社の会社組織の違いや強みについて理解することができたのは、大変有益な体験でした。
東京ゲームショウ2014
ゲームを遊んだり、ステージイベントに参加したいと自分が楽しみにしていた2,3のゲームに加えて、3つのメインイベントにも参加できました。最初のイベントはモバイルゲームのCEOやマーケッター、ディレクター、そしてマネージャによるパネルディスカッションで、バンダイナムコやキングなどが参加しました。ディスカッションのテーマはプラットフォームの多様性と顧客のグローバル化が自社のビジネスにどのような影響を与えるかについてでした。2つめのイベントはグーグルによるもので、Android向けにゲームを開発することの優位性についてでした。
3番目のイベントで、一番のお気に入りとなったのは、センスオブワンダーナイト2014でした。たいへん期待していたイベントで、その思いは裏切られませんでした。本当に素晴らしいゲームばかりで、新しいアイディアやコンセプト、そしてチャレンジが満載されており、ステージ上で審査と賞賛を受けていました。ファイナリストのゲームからは大きな刺激を受けました。そしてファイナリストと会話し、アイディアを交換したり、勇気づけられたりする機会がもてました。
パーティに参加させていただいたことも、たいへんありがとうございました。中でもIndie Stream Fes 2014はもっとも重要なものでした。そこで私は学生の間はとても難しいと思っていた方々とお会いできました。驚いたことに、もっともゲーム業界に影響を及ぼしたと思われる方々ですら、たいへん気さくで気軽に会話できました。このパーティはスカラーシップのハイライトでした。才能にみちあふれ、周囲に影響を与える人々であふれた会場に自分がいられたことは、私の人生の中でももっとも貴重な瞬間で、忘れがたいものになりました。
まとめ
IGDA日本の皆様には、その献身的な姿勢や、このような機会を実現していただいたことに対して、改めて御礼を申しあげます。小野憲史さん、尾形美幸さん、たいへんありがとうございました。自分の残りの人生とキャリアに対して、非常に大きな糧となる機会を与えてくださいました。
日本は素晴らしい国です。私は以前にも日本を訪問したことがありますが、その素晴らしい風景や、興味深く世界に類を見ないゲーム産業をもう一度見たいという気持ちを抑えることが出来ませんでした。また、他のスカラーの存在無しには、このスカラーシップがこのように素晴らしいものになったと他に紹介することはできなかったでしょう。とても国際的で上下関係のないスカラーたちで、彼らと一緒にいてふさぎ込んだまま過ごすというのは不可能でした。このエッセイを読んでくださっているとしたら、改めてそのことを強調しておきます! 地球は狭くゲーム業界は小さな産業です。近い将来に全員のスカラーと再びお会いできることを楽しみにしています。(スパンフォコム大学、ダンテ・メディナ)
Introduction
Greetings! My name is Dante Medina, I am a Mexican-born student currently pursuing a Master’s degree in Management & Game Design at Supinfogame, France. As a 2014 Tokyo Game Show scholar, I would like to take this opportunity to show my gratitude towards IGDA Japan not only for this unique experience they have gifted me with, but also for all the work they have done connecting Western and Japanese developers. I hope many years of success await this great organization.
As a student currently aiming to work as a producer, this scholarship allowed me to discover different game production methods than those I am learning about. I was able to broaden my horizons and see how unique Japanese game development is. Case in point, Ubiquitous Entertainment Inc. or UEI.
I was really impressed with this studio’s track record. Founded the 8th of August 2003, their founding member had already focused on innovation and on pushing available tech to its limits. Some of them were able to launch the first mobile phone with email back in 1999. Others quickly followed with the first mobile MMO game in 2000. Of course, this was only possible in Japan where mobile phones were extremely sophisticated compared to what we had in the western world at the time. Regarding the games they had made before working at UEI, some of them actually developed a game for Toyota which far exceeded my expectations of what an ad-game should be: they actually released a CCG with physical cards that could be used in game!
As for games made by UEI, they were able to publish the first ARPG for mobiles named Meruru no Hihou. They followed this milestone by focusing on AR applications and games such as an AR-hunt game named Crimson Fox and an AR navigation app, ARider. Finally, they released Elysion in the Sky, a robust mobile-only MMORPG.
Besides consumer software, they are currently working on a very interesting project. Their R&D team is continually working on an HTML5 and Java learning game engine called enchant.js which is already powering a variety of Japanese mobile games. It’s very easy to use, and any finished game can be uploaded to their website 9leap where users can play and rate each other’s games. Last but not least, their enchant moon tablet makes it easy for people of all ages to start quickly developing games without writing a single line of code through the use of an enchant.js-powered engine named moonblock. The user-friendliness of moonblock is truly great, and it’s incredible seeing how many games have already been created by people with no programming experience whatsoever.
After a presentation of their company, we were given a tour of the studio and one of the artists talked to us about the production pipeline and the number of engineers and artist in any given project. Finally, one of their programming interns gave us a final presentation about the mobile optimization work for enchant.js he’s doing. He also talked to us about technicalities of the engine such as rendering techniques, type of shaders and how he intended to improve the reaction time, rendering speed and FPS count on mobile platforms.
All in all, UEI’s work extends far beyond game-oriented software and hardware. They’re always experimenting with new technologies and also creating new ones. It is truly great seeing a company working towards making game-making easy for everyone because I believe this paves the way to seeing more interesting and unique games in the future.
Land Ho! is an 80 people game software company founded in 1999 by former Sega employees. We sat down with the general manager of business development and he gave us a very personal overview of his studio. They have developed a lot of games, although many of their games have been published by a large number of famous and prestigious publishers. Their biggest hits include horse-racing games, although their casual-oriented dancing games have done very well. Their most famous game is the Xbox One-exclusive game Crimson Dragon, which was extensively promoted by Microsoft during their 2013 E3 conference.
They have developed games on a large variety of consoles and are always working on new platforms and with new technologies. What’s interesting about the studio is that they belong to the category of mid-sized developers, and they have decided to focus not only on original IPs but also on work-for-hire games. The adaptability of their team is admirable because they don’t focus only on one platform and they have launched a huge amount of games despite their size. It was very enriching to visit them and have them offer us an insight on their business practices.
As a developer specialized in mobile online games, Aiming has done exceedingly well. Founded in 2011, they now operate four studios in three different countries. One of their MMOs is currently Japan’s number 4 in number of active players. Their ambition of focusing only on online mobile games has paid off since now they have successfully released and are currently maintaining a large number of games on the Japanese mobile market. Their games include "Lord of Knights", hack and slash game "Valiant Legion" and "スマホでゴルフ!ぐるぐるイーグル", a successful golfing game.
What I liked most about Aiming is their work philosophy. Managers are very interested in the games that their employees play, and they even play and analyze games together. On Mondays, they hold a study session for the team. In order to maintain their launched games, they divide their team between client and backend and use this production methodology to keep their games updated with additional content and events. Moreover, they organize after-work get-togethers for the team! All in all, Aiming is a studio focusing on the well-being of their employees which in turn improves work environment. I was able to learn a lot from their work methodology.
At the end of the presentation and studio tour, a number of key creative members of the studio offered their time in order to look at the portfolios of all the scholars. I was able to talk with one of their Lead Game Designers and he kindly offered to look at my work all while giving me useful advice and speaking at length about their production pipeline. It was very useful to get a closer look and understanding of the differences and benefits of their work organization from the ones I am used to.
2014 Tokyo Game Show
Aside from playing and attending presentations from a couple of games I am looking forward to, we were able to attend three main events. The first consisted of a round-table between mobile game studios CEOs, marketers, directors and managers from companies such as BANDAI NAMCO and King. The subject of their debated consisted on how diversifying their game platforms and reaching a global audience impacts their business strategies. The second one consisted of a conference by Google and the benefits of developing for Android.
The third event and my personal favorite was the Sense of Wonder Night 2014. I had high hopes for this competition and I was not disappointed. It truly is incredible seeing games with new ideas, concepts and challenges being judged and rewarded on a grand stage. I was very inspired by the games being presented and I took my chance and, afterwards, took the opportunity to exchange ideas and engage in conversation with most of the contestants.
I was able to do so thanks to the parties we were able to attend, most importantly the Indie Stream Fest 2014. There, I met people I didn’t even imagine I could meet while still being a student! To my surprise, even the most influential game industry people were very approachable and open to conversation. It was one of the highlights of the scholarship: being in a room full of talented and inspiring people was a very important moment in my life which I shall not forget soon.
Conclusion
I have thanked IGDA Japan over and over for their generosity and work in making all of this possible, but I will do so one more time because they deserve it: Mr. Kenji Ono and Mrs. Ogata Miyuki, thank you for everything. You have given me moments I will treasure for the rest of my life and my career.
Japan is a great country and while I have visited it before I cannot wait to see its beautiful sights and its interesting and downright unique game industry once again. I would also like to mention how this scholarship wouldn’t have been so amazing without my fellow scholars. With such an international, varied and just plain fun crew, it was impossible not to enjoy it even more so a shout-out to you guys if you happen to be reading this! It is a small world and a small industry, so I’m looking forward to seeing all of you once again in the very near future! (Supinfogame, Dante Medina)
日本語翻訳:小野憲史, Internationalization Force, IGDA日本
Japanese translation: Kenji Ono, Internationalization Force, IGDA Japan
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