2011年4月28日木曜日

米国ゲームとマーケティング紹介:アメリカ伝統文化「ゾンビ」について

Call of Duty BlackOpsのゾンビDLCが発表されました。今回は米国でのマーケティングとゲームの内容の面白さを紹介したいと思います。まず、感動したのが溢れんばかりのロメロ愛。次に有名役者が出演している事です。

映画「マチェーテ」の強面主演役者のダニー・トレホがドスの利いた声でゾンビへ威嚇し、銃をぶっぱなし。

Buffy The Vampire Slayer役で有名なサラ・ミシェル・ゲラーはキャラに扮してゲームに登場。Buffy役で有名な飛び蹴りを披露し。

悪夢の帝王ことフレディ・クルーガー役ロバート・エングランドが必殺農耕道具ピッチフォークでゾンビをぶっさし。

マイケル・ルーカー(TheWalkingDead主演)が記憶に残る姿そのままにゾンビをなぎ倒す。

*流血や残虐な描写等を含むため、以下の動画には十分な注意をした上での視聴をお願いします。

それぞれがホラー映画の経験者で、それぞれの持ちキャラを彷彿させる武器、格好、そしてセリフ!B級ゾンビ映画のドリームチーム状態、スーパーゾンビ大戦状態です!素晴らしい。素晴らしい程に分かっているよ、プロデューサーさん!
有名役者の声優としての出演ならまだ例は多いのですが、有名役者の3Dキャラモデルの正式出演はカプコン「鬼武者3」のジャン・レノ以来、かなり久しぶりといった感じです。映画のゲーム化は別として、記憶に無いだけかもしれませんが。

B級70年代映画臭がするこのトレーラーもまた雰囲気を出している。
最後にロメロ御大(というか、本人の3dキャラモデル)がゾンビとしてご登場。旧来ゾンビファンには嬉しすぎるアホ演出。
この作品の宣伝は演出の勉強になります。ベタベタに70年代映画的な演出もそうですが、気になったのはゲームへの出演をする役者さんがいる事実。実際の役者を模したキャラクターは危険性をかなり持ちますが、こうしたベタなお約束にはドンピシャでヒットをしています。
同時にゲーム会社としては、肖像権を使う程のメリットがあるのかどうかは全く別の問題として、ですが。上記の鬼武者3のジャン・レノ登場は作中、ジャン・レノである必然性が無かった事もあり、一時のインパクト以外の意義を感じませんでした。今回のゾンビ追加パックに関しても、イマイチ日本での認知度が低い役者さんもいると思います。こうした問題や疑問からも使いどころが難しいけれど、今後もゲームと映画が近づくにつれ、有名役者による出演の機会はあるだろうと思われます。

アメリカと映画文化

次世代のエンタメになりつつゲームはアメリカではかなりの浸透率をみています。HALOシリーズを見れば、どれだけアメリカの国民的ヒーローであるのかが一目瞭然です。こうしたゲームは映画に飛び込み、参加するという趣きがあり、年々ゲームはより映画的になっていきます。

比較して、日本のゲームは「視聴するゲーム」という意味での映画的になっている感がありますが、こういった趣向の違いもまた興味深い。

アメリカの大作ゲームがより映画的になって行く中で、これもある意味ではすごく映画的なゲームになりそうです。こういうアプローチもあるのか!と感心するばかりです。慣れ親しんだ役者がいかにもなベタなシチュエーションで、お約束となったやりとりをする。プレイヤーが飛び込んで、共演するには最高の舞台です。アメリカはゾンビブームな事もありますが、大事なのは映画好きが多く、こうした過去の作品を模したベタな演出も大好き、という事です。
1から雰囲気をつくらず、既存の作品群から借りられるワケですからね。ゲームもそういったお約束を押えたら、演出として興ざめさせずに楽しませることができる、という事です。お約束はお約束でも、上手に使ったらそれは王道的な演出である、という。ここは日本も同じですね。なにも奇抜な演出や設定をしなくても良い。プレイヤーはただ、映画の主人公になりきりたいのだ!

ベタなゾンビものだからこそできる、という事もありますが。なぜ氷海の船にゾンビがいて、なぜこの四人がゾンビに囲まれていて、なぜ武器がどっさりとあるのか。もう、そこはどうでもいいのだ。全部ゾンビ映画なのだから、無茶苦茶な理論も笑いをさそうスパイスなのだから。

文化的ローカライズの難しさ

日本もゾンビ映画大好きな所もあり、このままで通用しそうな所もありますが…ローカライズには問題がついて回ります。アメリカゾンビ映画の有名役者のベタなオマージュを日本の人は理解できるのか?という疑問が大きい。内輪ネタは何処でも翻訳し辛いものですが、ニッチ文化のお約束の上に立っている作品はさらに扱いづらい所があります。どこまで客層がネタを理解してくれるのか、説明書きは無粋になるのだろうか?と疑問は付きまといます。翻訳しても、ネタが多すぎて意味が通じなかったら本末転倒です。
もちろん、ゾンビ映画ファンは狂喜乱舞だけど、アメリカほどゾンビ映画文化が浸透しているのかどうか、が疑問として残る。文化的な垣根は如何ともし難い。

ローカライズを行うとなると、日本ゾンビ映画の有名所を持ってきて、アメリカ追加パックの追加パックを作りたい所。もちろんロメロ監督はそのままでOKです。が、ここで問題が。日本で有名ゾンビが思いつかない。キョンシーくらいしか思いつかない。むしろ、ロメロゾンビがスタンダードゆえにさらにニッチになる危険が。

この場合、ローカライズはそのままするしか無いと思われます。ゾンビ映画としてはベタベタなので、興味あれが原典となるロメロ映画を借りて見れば良い。むしろ、ロメロ本人が登場しているのだから、難しくは無いと思われます。アイデアとしてはゾンビ映画の歴史をちょろっと紹介するページを挿し込むだけで良くなるかもしれない。アメリカならNetFlixとの直通リンクを作り、懐かしのゾンビ映画をワンタッチで視聴できるような機能もまた良いかも。日本での映画のオンライン配信によるゾンビスペシャルと合わせる事も新たなビジネスとして通用する可能性はあるだろう。重要な点は映画的なゲームとネットワーク接続型の多機能デバイスを活用することにある、と僕は思う。ゲームから外の世界へとつながる展開も将来の「ローカライズ」の枠に入れるべきではないだろうか?



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米田 健(ヨネダ・ケン)
和菓子と抹茶を愛するカルフォルニア州在住のバイリンガル翻訳・通訳者。 学費を苦心しつつ本業であるはずの大学で広く浅く様々な分野を無節操に受講中。卒業は未定。ゲーム関係は、IGDA Japan i18n Force (Internationalization Force)にて活動中。好きなゲームはボードゲームとCo-opマルチ系です。オススメや連絡はツイッター@akatombo、またはkyoneda+IGDAblog@ninjatranslator.netまで。

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