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2011年6月30日木曜日

米国最新事情:カルフォルニア州ゲーム規制法案の敗訴について

ゲームは言論の自由に守られる。

アメリカゲーム業界のビッグニュース:カルフォルニア州ゲーム規制法案の敗訴しました。

この法律の概要から説明をすると、2005年に法案から決議され、施行開始となりました。法案を作成した議員は児童心理学者でもあり、ゲームの悪影響を危惧している人です。このカルフォルニアの法律は販売の禁止ではなく。未成年者(18歳以下)への販売を禁じる事でした。つまり、未成年者は内容が非常に暴力的なゲームを直接購入できず、親を通してのみ入手できるという法です。販売店には罰金1000ドルが設定され、これに対してEMA(ゲーム販売者協会)が起訴したのです。日本のCEROに相当する米国のESRBが判断する年齢基準とは異なった判断でゲームの販売が規制される可能性からESRBの親組織ESAも弁護士団を結成して、起訴側の補助に回りました。

一度敗訴した法律が最高裁へ上訴され、今回最終的な判断が下されました。

大まかに説明すると、『ゲームは言論の自由に守られる表現である。そして、その制限をする州法は違法である』という判決がアメリカ最高裁で判定しました。
アメリカの言論と表現の自由は強い。そして、それを守る為の活動も非常に活発です。

細かく説明するとこの法律の規制対象が「暴力描写」と不明瞭な定義である事が一つの問題となりました。アメリカの言論の自由に「精神的に不快」な表現は守られていません。児童ポルノやスナッフフィルム(Wikipedia)といった、大きく社会常識から外れた表現等です。ゲームの暴力描写はそのように精神的に不快な物と判断ができないと判断されました。
州は児童を悪影響から守る行動は違法ではありません。しかし、この法律において、施行をするとグリム童話が規制対象となりうる事から、法律として成立はできないという判断が下されました。

この法律も青少年保護とはありますが、アメリカ国内における18歳以下の犯罪行為はここ16年下降しています。ゲームが犯罪行為を促す、という理論に科学的な根拠が無い、という事も判明しつつあります。こうして、真剣に向き合い、アメリカではゲーマーが親になっている事も大きいと思います。辛い現実とは違い、安全に危険な事ができるゲーム。また、なにかしらの褒美が絶対でるゲーム。使いどころによっては良い影響もあるという研究も行われています。
CoDのような戦争ゲームをプレイする兵隊はPTSD等が緩和できる事があるそうで。現実のストレスをゲームでガス抜きできるんでしょうね。ゲームと現実を区別できない人間が圧倒的少数で、彼らは精神的に問題を抱えているという事も議論の対象となったようです。

しかし、手放しにこの法律は悪い物だと決め付ける事もまたいけないと思います。特に裁判官で反対意見をだした二人の裁判官の意見は事態が複雑で有ることを示しています。この二人の裁判官が反対意見(規制法賛成)の意見を出しましたが、かれらの論理もまた有効であり、アメリカのゲーム市場を理解するに有用な意見です。

反対意見裁判官1:
なぜ性行為と暴力描写にこうまでも異なる基準を使っているのだろうか?未成年への性行為を描写した写真、絵描、そして動画の販売を法律として制定していると同時に同じ未成年者にゲームで残虐に女性を殺すゲームの規制に反対することに問題があるのではないか?言論の自由の意味を考えて、反対票を投じます。 
 反対意見裁判官2:
規制法は購入を禁じるのみで、その利用を違法化するものではない。親に頼んで購入してもらう、という親の判断を挟む事に繋がるこの法は昔ながらのアメリカの家族のやりとりに通じる。現在の法においても親を通さず未成年へ直接影響を及ぼす事は限定されており、このゲーム規制法はそれと類似するものと認識する。言論の自由は守られ、犯されていない為反対意見である
 (*実際、子供に向けたタバコの広告はダメ。ファストフードについてくる子供向け玩具も規制する方向にある場所もある) 


最後に賛成意見ながらも、法律の意図を考慮した裁判官もいました。



第三の裁判官:
アメリカにはわいせつ物法律がありますが、それには何がわいせつ物か、と定義しなければならない。ゲームで禁じた描写(造物、血液、四肢欠損等)は映画等で描写があたりまえとなっており、これらは現在未成年者が容易に手に入る。映画や本と違う基準をゲームのみに設けるのは法的に難しい。この法は現在の形では施行するには定義が曖昧で広すぎるので問題と認識します。これにより、この法の撤廃に賛成します。

同意できる意見です。ESAの運営するESRBもレーティングの維持と販売店舗での徹底に努力を続けています。同時にとても若い表現媒体であるゲームに関して、社会と文化は認識をこの先改めて続けて行くでしょう。今回の判決に関してESAはVideoGameVotersNetworkの結成を補助し、投票者を組織して立法の段階でこうした規制に対する活動を行える体制を整えています。お互いの妥協点を求めて論争は続きます。前日の四本指に関する表現等、文化ローカライズの重要性は減衰することは無いと思います。



投稿者:


米田 健(ヨネダ・ケン)
和菓子と抹茶を愛するカルフォルニア州在住のバイリンガル翻訳・通訳者。 学費を苦心しつつ本業であるはずの大学で広く浅く様々な分野を無節操に受講中。卒業は未定。ゲーム関係は、IGDA Japan i18n Force (Internationalization Force)にて活動中。好きなゲームはボードゲームとCo-opマルチ系です。オススメや連絡はツイッター@akatombo、またはkyoneda+IGDAblog@ninjatranslator.netまで。


2011年4月28日木曜日

米国ゲームとマーケティング紹介:アメリカ伝統文化「ゾンビ」について

Call of Duty BlackOpsのゾンビDLCが発表されました。今回は米国でのマーケティングとゲームの内容の面白さを紹介したいと思います。まず、感動したのが溢れんばかりのロメロ愛。次に有名役者が出演している事です。

映画「マチェーテ」の強面主演役者のダニー・トレホがドスの利いた声でゾンビへ威嚇し、銃をぶっぱなし。

Buffy The Vampire Slayer役で有名なサラ・ミシェル・ゲラーはキャラに扮してゲームに登場。Buffy役で有名な飛び蹴りを披露し。

悪夢の帝王ことフレディ・クルーガー役ロバート・エングランドが必殺農耕道具ピッチフォークでゾンビをぶっさし。

マイケル・ルーカー(TheWalkingDead主演)が記憶に残る姿そのままにゾンビをなぎ倒す。

*流血や残虐な描写等を含むため、以下の動画には十分な注意をした上での視聴をお願いします。

それぞれがホラー映画の経験者で、それぞれの持ちキャラを彷彿させる武器、格好、そしてセリフ!B級ゾンビ映画のドリームチーム状態、スーパーゾンビ大戦状態です!素晴らしい。素晴らしい程に分かっているよ、プロデューサーさん!
有名役者の声優としての出演ならまだ例は多いのですが、有名役者の3Dキャラモデルの正式出演はカプコン「鬼武者3」のジャン・レノ以来、かなり久しぶりといった感じです。映画のゲーム化は別として、記憶に無いだけかもしれませんが。

B級70年代映画臭がするこのトレーラーもまた雰囲気を出している。
最後にロメロ御大(というか、本人の3dキャラモデル)がゾンビとしてご登場。旧来ゾンビファンには嬉しすぎるアホ演出。
この作品の宣伝は演出の勉強になります。ベタベタに70年代映画的な演出もそうですが、気になったのはゲームへの出演をする役者さんがいる事実。実際の役者を模したキャラクターは危険性をかなり持ちますが、こうしたベタなお約束にはドンピシャでヒットをしています。
同時にゲーム会社としては、肖像権を使う程のメリットがあるのかどうかは全く別の問題として、ですが。上記の鬼武者3のジャン・レノ登場は作中、ジャン・レノである必然性が無かった事もあり、一時のインパクト以外の意義を感じませんでした。今回のゾンビ追加パックに関しても、イマイチ日本での認知度が低い役者さんもいると思います。こうした問題や疑問からも使いどころが難しいけれど、今後もゲームと映画が近づくにつれ、有名役者による出演の機会はあるだろうと思われます。

アメリカと映画文化

次世代のエンタメになりつつゲームはアメリカではかなりの浸透率をみています。HALOシリーズを見れば、どれだけアメリカの国民的ヒーローであるのかが一目瞭然です。こうしたゲームは映画に飛び込み、参加するという趣きがあり、年々ゲームはより映画的になっていきます。

比較して、日本のゲームは「視聴するゲーム」という意味での映画的になっている感がありますが、こういった趣向の違いもまた興味深い。

アメリカの大作ゲームがより映画的になって行く中で、これもある意味ではすごく映画的なゲームになりそうです。こういうアプローチもあるのか!と感心するばかりです。慣れ親しんだ役者がいかにもなベタなシチュエーションで、お約束となったやりとりをする。プレイヤーが飛び込んで、共演するには最高の舞台です。アメリカはゾンビブームな事もありますが、大事なのは映画好きが多く、こうした過去の作品を模したベタな演出も大好き、という事です。
1から雰囲気をつくらず、既存の作品群から借りられるワケですからね。ゲームもそういったお約束を押えたら、演出として興ざめさせずに楽しませることができる、という事です。お約束はお約束でも、上手に使ったらそれは王道的な演出である、という。ここは日本も同じですね。なにも奇抜な演出や設定をしなくても良い。プレイヤーはただ、映画の主人公になりきりたいのだ!

ベタなゾンビものだからこそできる、という事もありますが。なぜ氷海の船にゾンビがいて、なぜこの四人がゾンビに囲まれていて、なぜ武器がどっさりとあるのか。もう、そこはどうでもいいのだ。全部ゾンビ映画なのだから、無茶苦茶な理論も笑いをさそうスパイスなのだから。

文化的ローカライズの難しさ

日本もゾンビ映画大好きな所もあり、このままで通用しそうな所もありますが…ローカライズには問題がついて回ります。アメリカゾンビ映画の有名役者のベタなオマージュを日本の人は理解できるのか?という疑問が大きい。内輪ネタは何処でも翻訳し辛いものですが、ニッチ文化のお約束の上に立っている作品はさらに扱いづらい所があります。どこまで客層がネタを理解してくれるのか、説明書きは無粋になるのだろうか?と疑問は付きまといます。翻訳しても、ネタが多すぎて意味が通じなかったら本末転倒です。
もちろん、ゾンビ映画ファンは狂喜乱舞だけど、アメリカほどゾンビ映画文化が浸透しているのかどうか、が疑問として残る。文化的な垣根は如何ともし難い。

ローカライズを行うとなると、日本ゾンビ映画の有名所を持ってきて、アメリカ追加パックの追加パックを作りたい所。もちろんロメロ監督はそのままでOKです。が、ここで問題が。日本で有名ゾンビが思いつかない。キョンシーくらいしか思いつかない。むしろ、ロメロゾンビがスタンダードゆえにさらにニッチになる危険が。

この場合、ローカライズはそのままするしか無いと思われます。ゾンビ映画としてはベタベタなので、興味あれが原典となるロメロ映画を借りて見れば良い。むしろ、ロメロ本人が登場しているのだから、難しくは無いと思われます。アイデアとしてはゾンビ映画の歴史をちょろっと紹介するページを挿し込むだけで良くなるかもしれない。アメリカならNetFlixとの直通リンクを作り、懐かしのゾンビ映画をワンタッチで視聴できるような機能もまた良いかも。日本での映画のオンライン配信によるゾンビスペシャルと合わせる事も新たなビジネスとして通用する可能性はあるだろう。重要な点は映画的なゲームとネットワーク接続型の多機能デバイスを活用することにある、と僕は思う。ゲームから外の世界へとつながる展開も将来の「ローカライズ」の枠に入れるべきではないだろうか?



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米田 健(ヨネダ・ケン)
和菓子と抹茶を愛するカルフォルニア州在住のバイリンガル翻訳・通訳者。 学費を苦心しつつ本業であるはずの大学で広く浅く様々な分野を無節操に受講中。卒業は未定。ゲーム関係は、IGDA Japan i18n Force (Internationalization Force)にて活動中。好きなゲームはボードゲームとCo-opマルチ系です。オススメや連絡はツイッター@akatombo、またはkyoneda+IGDAblog@ninjatranslator.netまで。