ゲームは言論の自由に守られる。
アメリカゲーム業界のビッグニュース:カルフォルニア州ゲーム規制法案の敗訴しました。
この法律の概要から説明をすると、2005年に法案から決議され、施行開始となりました。法案を作成した議員は児童心理学者でもあり、ゲームの悪影響を危惧している人です。このカルフォルニアの法律は販売の禁止ではなく。未成年者(18歳以下)への販売を禁じる事でした。つまり、未成年者は内容が非常に暴力的なゲームを直接購入できず、親を通してのみ入手できるという法です。販売店には罰金1000ドルが設定され、これに対してEMA(ゲーム販売者協会)が起訴したのです。日本のCEROに相当する米国のESRBが判断する年齢基準とは異なった判断でゲームの販売が規制される可能性からESRBの親組織ESAも弁護士団を結成して、起訴側の補助に回りました。
一度敗訴した法律が最高裁へ上訴され、今回最終的な判断が下されました。
大まかに説明すると、『ゲームは言論の自由に守られる表現である。そして、その制限をする州法は違法である』という判決がアメリカ最高裁で判定しました。
アメリカの言論と表現の自由は強い。そして、それを守る為の活動も非常に活発です。
細かく説明するとこの法律の規制対象が「暴力描写」と不明瞭な定義である事が一つの問題となりました。アメリカの言論の自由に「精神的に不快」な表現は守られていません。児童ポルノやスナッフフィルム(Wikipedia)といった、大きく社会常識から外れた表現等です。ゲームの暴力描写はそのように精神的に不快な物と判断ができないと判断されました。
州は児童を悪影響から守る行動は違法ではありません。しかし、この法律において、施行をするとグリム童話が規制対象となりうる事から、法律として成立はできないという判断が下されました。
この法律も青少年保護とはありますが、アメリカ国内における18歳以下の犯罪行為はここ16年下降しています。ゲームが犯罪行為を促す、という理論に科学的な根拠が無い、という事も判明しつつあります。こうして、真剣に向き合い、アメリカではゲーマーが親になっている事も大きいと思います。辛い現実とは違い、安全に危険な事ができるゲーム。また、なにかしらの褒美が絶対でるゲーム。使いどころによっては良い影響もあるという研究も行われています。
CoDのような戦争ゲームをプレイする兵隊はPTSD等が緩和できる事があるそうで。現実のストレスをゲームでガス抜きできるんでしょうね。ゲームと現実を区別できない人間が圧倒的少数で、彼らは精神的に問題を抱えているという事も議論の対象となったようです。
しかし、手放しにこの法律は悪い物だと決め付ける事もまたいけないと思います。特に裁判官で反対意見をだした二人の裁判官の意見は事態が複雑で有ることを示しています。この二人の裁判官が反対意見(規制法賛成)の意見を出しましたが、かれらの論理もまた有効であり、アメリカのゲーム市場を理解するに有用な意見です。
反対意見裁判官1:
なぜ性行為と暴力描写にこうまでも異なる基準を使っているのだろうか?未成年への性行為を描写した写真、絵描、そして動画の販売を法律として制定していると同時に同じ未成年者にゲームで残虐に女性を殺すゲームの規制に反対することに問題があるのではないか?言論の自由の意味を考えて、反対票を投じます。反対意見裁判官2:
規制法は購入を禁じるのみで、その利用を違法化するものではない。親に頼んで購入してもらう、という親の判断を挟む事に繋がるこの法は昔ながらのアメリカの家族のやりとりに通じる。現在の法においても親を通さず未成年へ直接影響を及ぼす事は限定されており、このゲーム規制法はそれと類似するものと認識する。言論の自由は守られ、犯されていない為反対意見である(*実際、子供に向けたタバコの広告はダメ。ファストフードについてくる子供向け玩具も規制する方向にある場所もある)
最後に賛成意見ながらも、法律の意図を考慮した裁判官もいました。
第三の裁判官:
アメリカにはわいせつ物法律がありますが、それには何がわいせつ物か、と定義しなければならない。ゲームで禁じた描写(造物、血液、四肢欠損等)は映画等で描写があたりまえとなっており、これらは現在未成年者が容易に手に入る。映画や本と違う基準をゲームのみに設けるのは法的に難しい。この法は現在の形では施行するには定義が曖昧で広すぎるので問題と認識します。これにより、この法の撤廃に賛成します。
同意できる意見です。ESAの運営するESRBもレーティングの維持と販売店舗での徹底に努力を続けています。同時にとても若い表現媒体であるゲームに関して、社会と文化は認識をこの先改めて続けて行くでしょう。今回の判決に関してESAはVideoGameVotersNetworkの結成を補助し、投票者を組織して立法の段階でこうした規制に対する活動を行える体制を整えています。お互いの妥協点を求めて論争は続きます。前日の四本指に関する表現等、文化ローカライズの重要性は減衰することは無いと思います。
投稿者:
米田 健(ヨネダ・ケン)
和菓子と抹茶を愛するカルフォルニア州在住のバイリンガル翻訳・通訳者。 学費を苦心しつつ本業であるはずの大学で広く浅く様々な分野を無節操に受講中。卒業は未定。ゲーム関係は、IGDA Japan i18n Force (Internationalization Force)にて活動中。好きなゲームはボードゲームとCo-opマルチ系です。オススメや連絡はツイッター@akatombo、またはkyoneda+IGDAblog@ninjatranslator.netまで。
0 件のコメント:
コメントを投稿